■スタート~マンガ家になるまで~

── 初めて描いた作品はどのような作品でしたか?


小学生の頃、クラスでマンガを描くのが流行っていました。みんな連載を持っていて、ノートに書いて読みあいっこをしていました。そこで描いた、親と離れた双子の子犬が母を探して旅に出る話が初めての作品だったと思います。


── プロのマンガ家になる前には会社員として働いていたと伺いました(先生著書の後書きより)。どういったきっかけで転職しようと思ったのですか?また、会社員からマンガ家に転身し、一番大変だったことは何ですか?


元々仕事をしながら副業的にイラストを描きたいと思っていたのですが、当時の職場では残業時間がだんだん増えてきてしまい、このままだと両立するのは難しいなと。マンガを描く時間が癒しの時間だったので、それが削られるのはいやだと思いました。新潟に戻りたかった気持ちもあり、新しいスタートを切る気持ちで、新潟に帰って1年間投稿してみようと思いました。


── 影響を受けた作家や作品、または印象に残っている作品があったら教えてください。


小学生の頃、宮崎駿監督が描いたマンガ『風の谷のナウシカ』に大きな影響を受けました。人間の凄さが今でも心に残っています。また、創作とはあまり関係ないですが、和月伸宏先生の『るろうに剣心』を読んで剣道と居合道を学び始めました。実際の史実の中にフィクションを取り入れ、夢や可能性を感じさせてくれるという部分は、自分の作品にも取り入れたいと思っています。


── 今注目している作品はありますか?


山口つばさ先生の『ブルーピリオド』です。美術大学を目指している高校生の話で、スポ根的な要素があり元気づけられます。美大に通ったことのない私にとって、専門な技法や美術のノウハウを知ることができすごく勉強になりました。


── 創作活動中に、他の作品を研究したりしますか?


自分の作品に没頭しているときは、思考がぶれるので他の作品はあまり見ることができないです。それだけ人に影響を与えるようなストーリーを考え、同時に絵も描くマンガ家さんは改めてすごいと感じます。



■今の創作活動について

── 日野先生にとって、マンガを描く時に欠かせないものやルーティンのようなものはありますか?


ルーティンではないですが、自宅ではマンガを描かず、仕事場を別に設けて出勤スタイルで描いています。作業時間に制限を設けることで、メリハリをもって作業に臨むようにしています。


── 作品を作るにあたって、最も気を付けていることは何ですか?


締め切りですね。一つの作品に陰で多くの人が関わっているので、関係者の方々にご迷惑をかけないように、ちゃんと守っていかなければならないと思います。


── 日常生活の中でマンガ創作に活かしていることはありますか?


人間をよく観察することです。人々のしぐさなどを観察しながら、その人がどういう人生を送ってきたか、どんなポリシーや美学を持っているのか、個性を見つけて参考にしたいと思っています。


── マンガ創作の他に、キャラクターデザインも手掛けているそうですね。そういった仕事は、どんなふうに依頼が来るのですか?


SNSに投稿していたイラストを見て声をかけて頂いたり、作品を見た人がまたお声掛けくださって…という感じで他の仕事の依頼が来るようになりました。

イラストレーターは、技術だけでなく実績や知名度が依頼に影響する部分もあるので厳しい世界だと感じます。


── また、キャラ作りの際、ご自身の中でどのような工程を経てキャラクターが誕生するのか、教えてください。


例えばゲームのキャラクターデザインの場合、それがモチーフのあるキャラクターであれば、まずは自分でも図書館やネットで調べてみます。伝説・逸話などの中でデザインに生かせる要素があれば取り入れます。基本的にはなるべく王道的で親しみやすいデザインを心掛けますが、まったくのおまかせであれば、自分の好みのデザインなど複数の案を出して決めていきます。

「ヒーローもの」がいい例ですが、見る人の第一印象を裏切らないキャラクターデザインというのが、その作品が長く続いていく秘訣なのではないかと思います。


■作品『バチカン奇跡調査官』について

── 今回のコミカライズの仕事を頂いたきっかけ、よろしければ教えてください。


会社を辞めた後、1年を上限に投稿を頑張ろうと思っていた矢先、担当編集者さんから「(バチカン奇跡調査官の)コンペに参加してみない?」とのお話をいただき、いくつか与えられた課題を提出して、最後に正式なオファーが来ました。


── コミカライズする際、毎回脚本の分量を決めるのは先生の方ですか?担当の編集者ですか?


編集者さんと打合せをしながら一緒に決めています。分量が各回20~30ページと決まっているので、原作でおさまりそうな範囲を決めながら、セリフを減らしたり説明を次のページに移したり工夫しています。毎回のラストに「引き」(※次が読みたくなるようなテクニック)を入れるので、それも考えなければならないですね。


── ネーム→ペン入れ→仕上げは、どのくらいの期間が掛かるのですか?


ネームは1~2日でペン入れは10日前後です。その後仕上げに1~2日ぐらいかかります。1話分の作画は約半月で制作していますね。本作に関しては、原作者の方にネームと完成原稿をチェックしてもらっているので、その日程も見越してスケジュールを立てています。

JAM日本アニメ・マンガ専門学校(新潟市)の学生さんの中からもアシスタントを募集し手伝ってもらっていますが、技術が高いので助けられています。


── キャラクターの造形は原作者の藤木稟先生やTHORES柴本先生、アニメの制作委員会の確認の上で描かれていたと思いますが、日野先生ご自身のこだわりはどういったところですか?


今回のマンガ化はメディアミックスの1つで、同時期にアニメ化もされているので、アニメの表現は意識するようにしました。アニメを見てマンガを買ってくれた人が受け入れやすいように、人物の造形や設定はアニメのビジュアルに合わせて単行本のときに書き直したりもします。

神職者が登場するので、俗っぽくない上品な動きや冷静な表情に気をつけて描きました。大げさな動きを、あえて抑えて表現するのが難しかったです。

また、文字の説明だけだと足りない部分に、イメージ画像などを加えてより分かりやすくなるように描きました。原作にある大量の文字情報をいかに数ページ内に収めるかが課題ですね。


── 本作は先生の専門分野と関わりのあるテーマでもあり、原作の緻密な設定を描くために素材や資料収集をずいぶんされたと思いますが、どのように資料収集をされるのでしょうか?


以前海外旅行に行った時に撮った教会などの写真が役に立ちました。普段行けないような所に行ったときには、写真を撮っておくようにしています。科学実験などの知識は図書館やネットで調べましたが、難しいので大変でした。


── 『バチカン奇跡調査官』のコミカライズは5巻で一区切りつきますが、先生のオリジナル作品はこれから連載開始だそうですね。それはどのような作品ですか?


「バチカン~」の5巻の最後のページにも載せていただきましたが、月刊コミックジーンの6月号から連載を開始する「BLACK BABYLON‐ブラック・バビロン‐」です。舞台は戦争が起きる前の1920年代の上海です。レトロで独特な雰囲気があり、個人的に好きなんです。

実在した時代を舞台に、フィクションを取り入れながら物語をつくっていきたいと思っています。

人が面白いと思うものを提供するのが仕事だと思っていますので、是非連載を楽しみにしていてください!


■ラスト〜「マンガ家」という職業について

── 日野先生にとって、マンガとは?


布教活動のようなものですね。考え方や美学など、じぶんが素晴らしいと思ったものをより多くの人に知ってもらいたくて、描き続けてきました。


── マンガ家としての抱負を教えてください。


なるべく長く現役でいられることです。生き残るのが大変な世界だと思うので、途切れずに作品を発表していきたいと思っています。

絵が描けない生活は考えられないので、今の選択に後悔はないです!やるっきゃないと思っています(笑)


── マンガ家を目指している方へのアドバイスをお願いします。


頑張ってください!別の仕事をしてからであっても、なりたい気持ちがあるのであればどんどん挑戦してほしいです。デビューはいろいろな方向からできると思います。


── 新潟市内でマンガ家として活動するのはどうですか?


強いて言えば、打合せや仕事のイベントのときに上京しなければならないので移動が発生しますが、デメリットはそのくらいですね。

原稿はメール添付で提出できますし、アシスタントさんとはオンラインでやりとりができます。デジタル作画なので画材も買いに行く必要がありません。地方で活動していくことは可能ですし、私は新潟が好きなので、好きな場所で仕事ができるというのは幸せです!


── 長時間のインタビュー、本当にありがとうございました。最後に読者へのメッセージ、一言でお願いします!


これからも面白いものをどんどんつくっていければと思いますので、作品を見ていただければ嬉しいです!新作もどうぞよろしくお願いします!


にいがたマンガ大賞