HOME > 特集記事 > メカニックデザイナー・鷲尾直広さんインタビュー

お話を伺ったのは、アニメ「宇宙のステルヴィア」、「蒼穹のファフナー」シリーズ、「機動戦士ガンダム00(ダブルオー)」、また現在放送中の「モーレツ宇宙海賊(パイレーツ)」など、数々の作品でデザイナーとして活躍されている、新潟市出身の鷲尾直広さん。

主にメカニックデザイナーとして活動されている中、キャラクターデザインやマンガも手掛ける鷲尾さんに色々お聞きしました。

■人との縁あってメカデザイナーへ

―― 初めにメカデザイナーになった経緯についてお聞かせいただけますか?


鷲尾さん:もともとはアニメーションの関係の仕事をしようと思っていたわけではなかったんです。アニメ関連の学校には通っていたんですけども、当時はゲーム関連の仕事をしようと思っていたので、学校を卒業してからもアニメの仕事は関わらずに、ドット絵を制作していたんですよ。その時にお仕事をもらった会社の方が、「蒼穹のファフナー HEAVEN AND EARTH」の総監督でもある能戸さんなんですが、能戸さんの紹介でメカデザイナーのコンペがあったんです。そのコンペに能戸さんが私の描いていた絵を出してくださいまして。そこで声がかかり、以後アニメの仕事に関わるようになったという感じです。


―― 人との縁あってということですね。


鷲尾さん:そうですね。その能戸さんが出してくれた絵というのも、そのコンペ用に描いたものではなかったんです。以前描いて手元にあるものも出しておくからという感じでしたから。ですから本当に縁があってという感じです。


―― 初めてのメカデザインはどのようなものでしたか?


鷲尾さん:実は高校を卒業するまではほとんど絵は描いていなかったんです。小さい頃に落書き程度の事はしていましたけど、ちゃんと絵を描き始めたのは専門学校に通い始めてからですね。また、当時はロボットよりは人物を描いている方が多かったんです。ただメカも描けるようになりたいとは思っていましたので。戦車や戦闘機、二足歩行をするロボット、今で言う「リアルロボット」を描いたりしていましたね。なので、その時に考えたものが最初の作品になるんでしょうけど、当時のイラストが残っていないので具体的には覚えていないです。

―― それだけたくさんのデザインを考えてきたということですよね。そこで、鷲尾さんがデザインをする上でこだわるポイントとは?


鷲尾さん:基本的に作中で描かれる世界観の中で説得力のあるデザインに仕上げる事ですね。それでも、用途だけにこだわると地味になってしまうので、例えばロボットであればかっこよさ、キャラクターであればかわいさといったものを意識しつつ、世界観にうまく合ったものにする事を考えています。一人で作り出すものではないですし、監督やプロデューサーなど他の人のアイディアもありますから、ある程度制約があった方が自分にはないものが得られたりします。

■作品の世界観とあったデザインを生み出す

―― メカのデザインをみると、腕が長く設定されている作品が多い感じがしますが。


鷲尾さん:癖かもしれませんが、「ファフナー」で腕を長く、という発注が多かったので、その後使ってくれる方も、ファフナーのイメージでそういう発注が増えたかもしれないです。最近ですと「ガンダムダブルオー」でもメカニックデザインに一部参加させていただきましたが、第二期にデザインしたガンダムの初期デザインはもっと腕が短かったんです。そこへ監督から「もっと長く」という指示があったので、そのようにしてみました。ダブルオー第一期にデザインした機体は、よりこれまでのガンダムに近いフォルムだったので、少し崩したフォルムにしてみました。


―― 崩しながらも、機体と搭乗するキャラクターとが合っているデザインだと思います。


鷲尾さん:ありがとうございます。ガンダムダブルオーに関して言えば、第二期にデザイン担当をした機体は設定段階でパイロットに変更があったので、最終的に決まったキャラクターに合わせて「敵」を意識して設定しました。「敵のガンダム」というイメージをした時、昔に見た「ガンダムmk-Ⅴ」という機体のような方向性にしようと思ったんです。あとはどこまで「ガンダム」から離しても「ガンダム」と言えるデザインであるか、というところですね。


―― それまでのフォルムを崩すことでインパクトを与えることもできますしね。


鷲尾さん:以前に「ターンAガンダム」がありましたけど、あれを「ガンダム」と認識できるのであれば大丈夫だろうなと。髭が生えてますしね(笑)。


―― では質問を変えまして、鷲尾さんが考える「実現できる可能性のあるメカ」はありますか?


鷲尾さん:今現在の技術では全て再現するのは無理でしょうけど、純粋に「動かす」程度なら「装甲騎兵ボトムズ」に登場するメカくらいの大きさなら大丈夫じゃないでしょうか。ただ研究に時間とお金をかけられるのであれば、大概の事はできると思います。遠い将来、重力を打ち消す技術などが出来上がれば、強度的な問題もなくなるので色々できそうですけどね。


―― その設定をアニメの中で表現しようとすると大変な作業になりそうですよね。


鷲尾さん:そのあたりはSF設定と演出におまかせです(笑)。


―― これまでにたくさんのロボットアニメーションが作られ、たくさんのロボットが生み出されてきましたが、そのロボットの「意義」とは何だと思いますか。


鷲尾さん:キャラクター1人にロボット1機という作品が最近は多いですよね。ロボットもキャラクターですから。ただ「ボトムズ」のように乗り捨てて使うようなこともありますし、でもそれもアニメの物語が展開していく中で重要な事ですし、ドラマがよりドラマチックに展開される場所として重要ではないかと思います。

―― 鷲尾さんが手がけた作品の中からピックアップしてお伺いしたいのですが、「蒼穹のファフナー」のデザインを考えた時のことについてお聞かせ下さい。


鷲尾さん:ファフナーのデザインは何もない所から始まりました。テレビシリーズ時の最初の指示は「とにかく描いて」というものだけでした。あえて挙げるなら、羽原監督から「某アクションフィギュアのように斜めに関節を入れて欲しい」というオーダーがありました。でも、実際にアニメで動くかといったら分からないですから。監督は「動かせるよ」と自信を持って言っていましたけど、他の人が考えた時に「動かせるの?」といった風にもなるじゃないですか。結果的には動きましたけど(笑)。あとファフナーは形がシビアな部分があって、少しデザインを変えるとファフナーとは異なるものになってしまうので、新しいものを作り出す時は大変でしたね。ただ、劇中で主人公が乗り換えた新機体については、シンプルなデザインに仕上げてほしいという依頼がありまして。よくロボットアニメはパワーアップした機体が出てくると、パーツが増えて出てくるものが多いですけど、そうならずに作れたのはよかったです。フォルムも作中に出てくる機体のデザインを活かしつつ、世界観に合ったデザインにできました。

■描くだけでなく、色々なものを受け入れられる状態でいる事が大切

―― 現在放送中の「モーレツ宇宙海賊(パイレーツ)」では、マクロスシリーズやアクエリオンで有名な河森正治さんもメカニックデザイナーとして加わっていますよね?


鷲尾さん:実をいうと、ほとんど一緒に仕事をしていないんです。一番最初に少し顔を合わせた程度で。ですが、初期のイメージデザインを送ってくれたりと場所は違えど共に仕事ができているのは楽しいです。「モーレツ宇宙海賊」のメカデザインについては、イメージを詰めたりする際は河森さんは加わらず私達他のデザイナーで作業を進めています。なので、ちゃんとした顔合わせは、終了後の打ち上げの時になりそうなので、その時には色々とお話ししてみたいです。


―― 最後に、デザイナーに求められるものとは何だと思いますか?


鷲尾さん:アニメ自体が自分一人で出来上がるものではありません。自分の好きなものが描けることはないですし、監督等の意見やアニメの世界観などをまとめた上で、求められた事に最低限応えなければいけないですから。ですから、それ以上のものが出来上がった時はうれしいですね。また、デザインを起こす時に「これはいけるな」と思ったデザインは、ほぼそのまま活かされています。デスクに向かっていない時でもデザインは考えていますが、いいイメージが浮かぶのは、少し楽にしている時であったりする事が多いです。「描く」といった作業から離れている時に意外と思いつく事が多々あります。ですから、ただやみくもに描くだけでなく、色々なものを受け入れられる状態にする事や、そうした環境に身を置く事が大切だと思います。

これからクリエイターを目指す方も、たくさんの事を経験・吸収して、発想を膨らませて色々なデザインを生み出していって頂きたいです。



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人との縁からアニメ業界に入り、今では数々のデザインを生み出している鷲尾さん。作品を考える時は、なるべく色々なものを受け入れられる状態にする事が大切との事でした。これからも鷲尾さんの作り上げたデザインが、たくさんの人の目に留まるはずです。鷲尾さんの新たなデザインに期待しましょう!


■鷲尾直広さん関連リンク

・鷲尾直広さん公式HP「STRANGE KIWI」

・「蒼穹のファフナー」公式HP|スターチャイルド

・「モーレツ宇宙海賊」公式HP|スターチャイルド

・「はるこん」公式HP

 (※SFファンの集まる国際コンベンションです。鷲尾さんがゲストとして来場されます。詳しい内容については、公式HPでご確認下さい。)

にいがたマンガ大賞