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HOME > 特集記事 > 第29回土師祭(はじさい)イベントインタビュー

9月4日(日)、埼玉県久喜市に位置する鷲宮で行われた「土師祭(はじさい)」へ行ってきました。鷲宮にある「鷲宮神社」から神社前に連ねる「鷲宮商店街」の通りを会場とした行事です。尚、同神社は「関東最古の大変由緒正しい大社の一つ」と言われています。


そんな由緒正しい場所で行われる土師祭では、2008年からユニークなイベントを取り入れています。

マンガ原作の人気アニメ作品『らき☆すた』(角川書店)のキャラクターを描いた神輿を担ぐ『らき☆すた神輿』を代表するサブカルチャーイベントです。

今ではメディアにも取り上げられ、知名度も広がったことから多くの注目を浴びています。また初詣に神社を訪れる参拝者数は同県第2位に達するまでになりました。


サブカルチャーを取り入れたイベントは近年多く耳にするようになりましたが、鷲宮がなぜここまで盛り上がるに至ったのか。今回は土師祭の主催者でもある鷲宮商工会の事務局長 吉岡憲一氏にイベント開催に至った経緯や取り組みなどについて伺いました。

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  ▲鷲宮神社前にて。ここで毎年9月最初の日曜日

  に土師祭は開催されます。


【インタビュー】 鷲宮商工会:事務局長 吉岡 憲一氏

Q、『らき☆すた神輿』を開催したきっかけについて教えてください。


―『らき☆すた神輿』を始めるきっかけは2007年から『らき☆すた』ファンによる鷲宮神社の聖地巡礼(マンガ・アニメ中で舞台設定にされている地域を訪れる、作品のファンによる行動)がきっかけです。現在も主催を務めている土師祭興会(はじさいこうかい)の方が、神社にたくさんのファンが訪れる様子を見て、「神輿を担いでもらって祭りを盛り上げてみては?」という意見を商工会に持ってきたことが始まりでした。最初は120人を募集したのですが、あっという間に全国から集まったんです。遠い所では富山や広島からの参加もありましたね。

ちなみに神輿は今年で4年目になるのですが、3年目から前回担ぎ手になってくれた人には手紙でこちらから担ぎ手の依頼をお願いしています。足りない分は募集しますけど、約2時間で定員オーバーになるような状況で、キャンセル待ちの人が多く出るほどです。

また、最初はファンの人たちが地域にうまく溶け込めるかが懸念されまして、継続して実施する考えはなかったのですが、大変な盛り上がりをみせたことから、「是非続けてほしい」という意見が多数寄せられて現在に至っています。


Q、イベントとしては大成功ですね。


―そうですね。今では本来お祭りで担がれていた神輿が薄れるくらいに元気があります。その中でも一番うれしかったのは、ファンの人達が裏方の仕事などをボランティアでやると名乗りでてくれた事です。最初の2年は商工会が裏方業務を行っていたんですよ。商工会も5人で行っているのでとても手が回らなかったんですが、そこにボランティアとして全国からファンが集まって、企画のとりまとめや担ぎ手の募集などの裏方業務を全てやってくれるんです。こうしたファンのおかげでイベントはうまくいっています。

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▲『らき☆すた神輿』の様子。乗っている女性の方もかなり体力を使うようですが、担ぎ手の声援を受けて笑顔でいる様子が伺えました。

Q、ファンが一緒に取り組んでくれている事はいいですね。そんなお祭りの魅力について伺いたいのですが、やはり参加する人が主導になってやってくれる事が大きな魅力の一つでは?


―そう思います。今の若い人達の観光の傾向として、「自分が参加型でないと興味をもたない」と思うんですよ。今回のお祭り以外にも色々なイベントをやっていますけど、企画の段階からファンに参加をしてもらっています。神輿の制作や当日の会場整理など運営スタッフを自分たちがやってくれるんです。自分たちが参加しているということで若い人達に「嬉しい」という気持ちがでてきて、多くの人が集まってくれます。

Q、本当にファンの人たちの力はすごいですね。これだけ多くのファンの人たちが集まるイベントですが、開始当初の地域の、特に商店街の方たちの反応はどうでしたか?


―鷲宮は東京から約1時間のベッドタウン地域なんです。日中、人がいないところに若い人が来るので珍しいじゃないですか。すると地元の商店街の方が商売人の気質もあって声をかけるんですよ。そこで商店街の人とファンとの間に交流が生まれてきたんです。これをきっかけに、来てくれた人に何か楽しんでもらおうと色々企画した結果、鷲宮を訪れるリピーターが多くなってくれました。

また、お祭りの時には遠方や海外から来ている担ぎ手やボランティアスタッフの為に地元の人が集会所や近辺のお店を寝床として提供するなどして協力してくれます。ファンの側は「迷惑をかけては行事がなくなるかもしれない。自分たちが楽しむ場所は自分たちで守らなければいけない」という気持ちで参加しているので、地域や現地の人を大切にしてくれています。そうした事が良い関係を生んで、徐々にファンからクチコミで広がっていき地域が盛り上がって、鷲宮の故郷意識も高まっていきました。

鷲宮の人たちはそれまで特色のなかった自分たちの地元を誇れるようになりました。ですから何も批判はありませんよ。みんな喜んでくれています。

Q、素晴らしいことだと思います。では、こうした関係を続けていく為に、今後も残していく事はありますか?


―残すということで言えば「鷲宮」という名前が一つですね。去年、鷲宮町が久喜市と合併したんです。その後、全国の鷲宮ファンから「鷲宮がなくなってしまうのは寂しい」という意見が寄せられました。そうした中で、鷲宮を残す為にどうしたらいいかを考えたんです。そこで、『らき☆すた』に頼っていたことから、色々なアニメファンを対象にしてやっていくことにしました。

その他に新たに観光として注目を高めるためにロケーションサービスを商工会で立ち上げたんです。ドラマや映画を作る事によってロケーションが紹介されて、また鷲宮に来てもらうことに繋がるようにしたんです。実際、昨年(2010年)に「鷲宮物語」という地域映画を作りました。それは商店の方や地域の方、ファンの人にも参加してもらって撮影を行ったんです。こうした事も行いながら、来てくれた人と地域の人とが楽しんでもらえることを考えていこうと思っています。

Q、みんなが「成功させる」というよりは「楽しむ」という気持ちが伺えますね。


―そうですね。今では「地域振興」ということで外部から評価されて、多くの人が視察や取材に来られますが、観光化や地域振興をやろうという意識でやっているわけではないんです。まずは来てくれた人に何か一つでも楽しんでもらおうという気持ちを第一に考えています。ですから金儲けを先に考えては駄目ですね。そのスタンスは今後も変わりません。


Q、地域が一つになって楽しんでいるんですね。


―楽しいですよ。私達も楽しいです。やる方も楽しくないと来てくれる人も楽しくないと思いますので。常に色んな企画を雑談の中で話し合うんですけど、その中で思いついた事をファンの方に聞くんです。そこで企画に乗ってきてくれたものを実行しているといったように取り組んでいます。グッズを出すときも同じで、内容や値段についてもファンに聞いています。常に新しい事を考えては必ずファン目線で企画をするんです。ですから来てくれた人も楽しめるんです。


Q、皆さんが作品や地域を大事にしていますよね。そうした意識の中で開催されているのでここまで盛り上がって続けていられるんでしょうね。


―そうですね。ファン、作品、作者、版権元の出版社、協賛してくれる企業、企画を承諾して取り組んでくれる行政等、どれか一つが欠けても成り立たないことです。まずは作品や地域を大事にする気持ちが第一優先ですね。

Q、確かにどれも欠けてはならないものですね。では最後にイベントのPR等があればお願いします。


―私達は年間計画を立てないんですよ。立ててしまうとうまくいかないので、皆さんの声を聞きながら、そこから何かやってみようかという風にやっているんです。先程も言いましたが、何か一つでも楽しんでもらえる事を常に考えて進んでいこうと思ってます。それで全国のファンの人から来てもらうことが私たちの楽しみでもありますから。そうしたことが、全国の地方都市に広がってくれることを期待します。そういった思いがあるので、私たちは持っているノウハウも全て出して壁を作らないようにしているんです。行政ですとエリアごとに壁を作ってしまう傾向がありますが、そういうことはしないで、結果的に多くの方が来てくれて全体が活気づいてくれればというふうに思っていますから。


また実際のイベント実施に関して言えば、どう調整するかですね。土師祭などのイベントは現在、私たちの商工会がプロデューサーとしての役割をしていますが、うまくやるには行政や地域の調整や共催している企業との調整をどこまでできるかによると思います。どれかがうまくいかなければせっかくの企画も単発で終わってしまったりしますので。



―本当に貴重なお話しでした。ありがとうございます


―なにかあれば聞いてください。がんばってくださいね。

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▲お祭り内で開催されたイベント「WOTAKOIソーラン」。毎年新しいイベントを考えながら、ファンや共催・協賛企業と一緒に盛り上げているそうです。

お話しを伺った後に、商工会の建物に案内してもらいましたが、事務所の壁やデスクにも『らき☆すた』を始めとしたアニメ・マンガグッズがたくさん飾られていて、自分たちも「マンガ・アニメが好き」という気持ちがそこからも伝わってきました。ちゃんと受け入れているからこそ、ファンとの交流も生まれ、大きなイベントが成功するのだなと感じました。

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▲商工会事務所の様子。壁やロッカーなど、至るところにアニメやマンガに絡んだグッズが飾られていました。『らき☆すた』のフラッグ(写真左)は鷲宮神社周辺のいたる所に飾ってありました。

年末年始の初詣にも、また賑わいをみせる鷲宮。今後のイベントも注目です!


以上、土師祭イベントインタビューでした。

にいがたマンガ大賞